もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 ふう、と息を吐くのが聞こえ、シエルはグランツを見る。

「それならば、これから私がどのような人間かを知ってもらいたい。求婚の答えはその後で構わないから」

 グランツもまた、シエルを見つめて言う。

「貴女が私を好いてくれるまで、いつまででも待とう。だからどうか機会(チャンス)をくれないだろうか?」

 控えめで誠実ながらも、どこか必死さを感じさせるひと言にシエルはうろたえた。

 彼女はもともと、他人の要求を拒むのが得意ではない。人の願いを叶えてばかりの生き方をしてきたせいで、自分の意思というものも希薄である。

「わかりました。では、今はまだ応えられないということで」

「ありがたい」
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