記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
ここは…俺とミホが出会った場所だ。
「少し休憩でもするか」
俺は木陰に行き、腰を下ろした。
そして目を瞑る。
"あの日"を思い出していた。
初めて俺とミホが出会った場所。
最初は傷だらけの少女に声をかけようか悩んだ。
でも…。
『大丈夫ですか?怪我をされていますね。今、治しますから』
彼女だったらきっと…迷わず声をかける。
そう思った。
だからミホに声をかけた。
まさか同一人物だとは夢にも思わなかったけど。
…今思えば、ミホとシュティーナ様は纏う雰囲気が少し似てたかもな……。
『クロさん!』
目を閉じるとミホが俺の名を呼んでいる。
ずっと笑っている…。
『…クロさん……お気をつけて』
最後に…シュティーナ様はそう言った。
苦しそうに笑いながら。
最後に見た姿は今にも泣き出していまいそうだった。
だんだんと遠ざかって行ってしまうシュティーナ様の姿。
俺は…あの時、何かできたのだろうか?
風がまた吹く。
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