記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
…すごくなんてない。
だって家族の誰からも褒められたことなんてないんですもの。
家族以外から褒められても私には響かなかった。
認めて欲しい…。
ただそれだけだった。
「ねぇ、ミルフィー。私はあと何を頑張ればいいのかしら?何をしたらあの方達に褒めてもらえるのかな?」
私はどこか遠くを見つめるのが癖になっていた。
「お嬢様…っ」
ミルフィーが微かに…声が震えていた。
「ミルフィー、泣かないで?私は…大丈夫よ」
ミルフィーは声を押し殺して泣いている。
私がダメな子だから。
この時はまだ我慢できた。
でも…ある日を境に少しずつ変わっていった。

「キャベン様、少しよろしいでしょうか?」
私の前に仁王立ちするのは同じクラスの女の子で確か名前は…。
「メノア様、何か御用でしょうか?」
リリー・メノア様でメノア伯爵の方だよね?
その方が私になんの用なのかな?
「少し場所を変えても?」
「…わかりました」
私は疑問に思いながらも従った。
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