記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
そうだ。
逃げてしまえばいいんだ。
「…ミルフィー」
でも逃げるならミルフィーにだけは伝えておかなきゃ。
突然いなくなったら心配しちゃうだろうから。
そっとドアを開けて入ってきたミルフィー。
「お嬢様、どうされましたか?」
ミルフィーはもう泣き止んでいた。
でも目は腫れていた。
…ごめんね、ミルフィー。
私のせいで…でももう。
「私はここから逃げる」
そう一言だけ伝えた。
ミルフィーは驚きもせず、反対もせずただ。
「全力でサポートさせていただきます」
そう言ってくれた。
「ミルフィーはどうする?」
家を飛び出したところで行くあてもない。
お金はいくらか持っていくが安定した収入を得るには時間がかかるだろう。
安全とは言いきれない。
そんなところにミルフィーを連れていくのは危険だ。
でも…。
「お嬢様」
ミルフィーの凛とした声。
「私はここに残ります」
そう強くはっきりと言い切ったミルフィー。
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