記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
でも私がこれよりももっと激しく怒りを覚えたのはこの後のことだった。
『お前はなんてことをしてくれたんだ!!』
お嬢様の言葉を遮っただけではなく、旦那様はお嬢様の頬を叩き、勢いよく突き飛ばした。
『っ!!』
私はすぐにお嬢様にかけよりたかった。
だがそれはできなかった。
お嬢様の顔がそれを許してはくれなかった。
絶対に助けに入らないでと。
『っ……』
私は自分の手を強く固く…握りしめた。
お嬢様を助けたい…。
今すぐに飛び出して…!

数分後、お嬢様はやっと解放された。
お嬢様はボロボロだった。
目に光がなく、真っ暗だった。
もう希望がなくなった瞳だった。
『お嬢様…っ!!』
私はすぐにお嬢様に駆け寄った。
もう…あんな思いはしたくない。
お嬢様はぐったりとしていた。
部屋に連れていくと、お嬢様は1人になりたいと言った。
私は命令通りに従った。
そのあとすぐにお嬢様の泣き声が聞こえた。
『……お嬢様』
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