記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
私はいつもそんなお嬢様をそばで見守るしかできなかった。
どんなにお嬢様が頑張り、成果を出しても褒めるではなく小さなミスを指摘するばかり。
『ミルフィー、いつもありがとね』
ある日、突然お嬢様はそう言った。
お嬢様はそのあとすぐに眠りについてしまったためどうして私にお礼を言ったのかわからなかった。
どんなに辛く、苦しくてもお嬢様は笑って毎日頑張っていた。
勉学に剣術、魔法。
いつもいつも頑張っていた。
例え…褒められなくとも…。
私も耐え続けた。
お嬢様の苦しみが少なからずとも私にもわかるから。
だが、そんなある日だった。
『お嬢様っ?!』
放課後、お嬢様はクラスメイトの伯爵令嬢とその取り巻きと少し話してくると出ていったと思ったら怪我をして帰ってきた。
『もしかしてあの方達に?』
私は激しく怒りを覚えた。
私の大切で敬愛するお嬢様を傷つけたのだ。
『…大丈夫だから』
『お嬢様…っ』
絶対に大丈夫ではないのに大丈夫だと言い張るお嬢様に私は何も言えなかった。
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