記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
私はクロックスさんの提案にこくりと頷いた。
クロックスさんは私に手を差し伸べてくれた。
私は差し伸べられた手をそっととる。
『行こう』
クロックスさんは笑顔で言ってくれた。
こんな傷だらけの私なんかに笑いかけてくれる人なんて……いない。
この人はどれだけ優しいのだろう…。
しばらく歩くとたくさんの屋台があった。
『こんなに、たくさん……』
たくさんの屋台にたくさんの人々。
『すごい……っ』
私は初めて見たこの光景に目を輝かせた。
クロックスさんはそんな私を見てクスクスと笑っていた。
『初めて?』
『はい!』
私は笑顔で返した。
本当に初めてだったから。
こんな素敵なところがあったんだなと感心する。
『まあここはまたいつか来るとして……あと少し歩くと宿があるんだ』
クロックスさんはそう言って屋台の先の方を指さした。
また……ここに連れてきてくれるんだと心の中で感動しながら。
クロックスさんが指さした方角にはたくさんの家…宿があった。
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