記憶喪失のお姫様は冒険者になりました

📖私は📖


宿を出てから私は全速力で王都…私の家に向かう。
向かっている途中、私はこれまでのことを思い出していた。
あの日……初めてクロさんに会った日のことを。

『君、大丈夫?』
そう声をかけたのはーー。
『名前は?俺はクロックス』
クロックスさんという方だった。
クロックスさんは傷だらけの私に声をかけてきた…優しい人だった。
『な、まえ……?えっと…』
私は頑張って名前を思い出そうとした。
だが、わからなかった。
名前以外も……。
なにもわからなかった。
『記憶ないの?』
『……』
私は答えられなかった。
私は記憶がないのか?と自分の心に問いかけていたから。
何も答えられなかった私を見捨ててもおかしくはないのにクロックスさんはーー。
『俺のとこおいでよ!宿は安いし、飯はうまい!な?』
そう言ってくれたクロさんが私には眩しかった。
記憶をなくしてあまり不安とかは感じなかった。
ただ…クロックスさんに出会えてよかったとそう思っている私がいた。
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