記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
そこにはクロさんの姿はなかった。
「ど、どうしよう…!はぐれてしまいました……っ!」
こういう時ってどうすればいいのか私はわからない。
いつもクロさんがそばにいてくれたから。
離れる時なんてあまりなかった。
「……」
クロさんは私を見放してしまったのかな?
私がクロさんのことあまり知らないから…。
私は服をギュッと握りしめた。
その時だった。
「うわあぁぁあぁん!!」
私の隣にいた小さな男の子が泣き出し。
私は驚いて一瞬固まってしまった。
そしてハッと意識を取り戻し、辺りをキョロキョロと見渡した。
「……」
お母さんの姿が見当たらない。
もしかしてはぐれてしまったのかな?
私はそっと男の子に歩み寄った。
そして声をかけた。
「ねぇ、僕。お母さんとはぐれちゃったの?」
私はできるだけ優しく、男の子に怖がられないように声をかけた。
すると男の子は私の方を見て答えた。
「…うん」
「そうなんだね。お母さんとはぐれて不安だよね?」
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