記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
そう言いたかった。
でも私は何も言わないでいた。
感情を表に出しすぎるのはよくない。
それに今、私が発言すると更にこの場が困惑する危険がある。
早く…終わらせたい。
「ほう…。ではシュティーナのことを自分達は褒めたと言い張るのだな?」
そう尋ねると3人は揃ってコクリと頷いた。
「だそうだ。シュティーナ、ミルフィー」
お爺様は私とミルフィーに合っているのか聞いた。
私とミルフィーは顔を見合わせた。
そして。
「いえ、違います。私はお父様達に一度も褒められたことなどありません」
私に続きミルフィーも。
「はい、私もお嬢様が旦那様、奥様、バンルー様がシュティーナ様を褒めたことを見たことなど一度もございません。皆様、お嬢様のミスをいつもご指摘していました」
ミルフィーは冷めた目でお父様達を睨みつけた。
ミルフィーと私の話を聞いたお爺様はお父様達の方を見て言った。
「だそうだ。本人とそのメイドが言うなんだから間違いないだろうな」
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