ブルー・ロマン・アイロニー


「そりゃお前、今どき格安スマホだって防水機能はついてんのに、旧型でもねえこの俺になんの対策も施されてないわけねえだろ?入浴はさすがにできねえが短時間のシャワーくらいならお茶の子さいさいよ」


言い方がなんだか腹立つ。

でもたしかに、よく考えたらわかることだった。


アンドロイドに水仕事を任せる人だっている。

アンドロイドに体臭はないとはいえ、見てくれを気にしている所有者なんかはシャワーを浴びせることだってあるだろう。


わたしが思っているよりもずっとアンドロイドの技術は進んでいるのかもしれない。

少なくとも、わたしが知っているアンドロイドは少しでも水に濡れてはいけなかったはずだ。


嫌でも知っていたあの頃とは違って、今はもう知る術もないし知りたいとも思わないけれど、ひとつだけどうしても言いたいことがあった。



「今すぐ脱いで」

「ああん?」

「だから、そのスーツ、脱いで」

「言い忘れてたけど、俺はセクサロイドじゃねえぞ」

「その言葉、二度とわたしの前で使わないで」


そうじゃなくて、とアンドロイドに指を向ける。



「汚いの、それ。そのまま部屋の中をうろつかれたら嫌だから、その服洗濯にかけるから、脱いでって言ってるの」


せっかくシャワーを浴びたというのに汚れたスーツを身につける意図がわからない。


< 36 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop