ブルー・ロマン・アイロニー
「俺にパンイチになれってか」
「なったらいい。恥ずかしいっていう感情があなたにわかるわけでもないし」
「どういう意味かはわかる。その感情がないだけだ」
「それにわたしも気にならない。ロボットの裸を見たってどうとも思わない」
「さっきすでに覗いてるしな、あんた」
「ああ言えばこう言う。皮肉屋ってよく言われない?」
「あんたは可愛げがないってよく言われんだろ?」
ともあれ、着たばかりであるスーツをまたすぐに脱がせた。
そうしてわたしはそれを抱えて脱衣所へと向かった。
当たり前だけれど、脱ぎ捨てられた衣服に残された体温はない。
ご丁寧にシャンプーまで使ったのか、脱衣所にまで微かに残るほんのり柔らかい花のような匂いが鼻腔をくすぐる。
いまわたしの髪と同じ匂いをさせているのだと思うととても不快になって。
アンドロイドのくせに、とまたしても心の中でつぶやいた。