ブルー・ロマン・アイロニー
「その通り」
「え」
「わからない、であってんだよ。わからねえんだ」
わたしは混乱して、目を瞬かせてしまった。
「どういうこと?なんの用途もなく作られるアンドロイドなんてありえない」
「それはそうだ。わかってる。俺にも何かしらの使い道があったんだろうよ」
“何かしらの使い道があった”
きっと深い意味もなく使っただけの、その過去形になぜか引っかかった。
その疑問を具現化するよりも早く、つまり、と話を続けられて言うタイミングを逃してしまった。
「どうやら俺は、お前と会うまでの記憶をなくしちまったらしい」
そのひとことがあまりにも衝撃で、一瞬で考えていたことが吹っ飛んだ。