ブルー・ロマン・アイロニー
「お、おはよう!」
教室に入ると、わたしはいつもより大きな声で挨拶をした。
声が裏返ってしまったかもしれない。
何人かのクラスメイトがこちらを振りかえって、驚いたのがわかった。
わ、とどこからか声が上がる。
それは少なくとも、悪い感じのトーンではなかった。
「おはよう、……藤白さん」
声をかけてくれたのはクラスメイトの女の子だった。
ドアの近くに座って友だちと話していた彼女は、控えめにわたしの髪の毛を指差してほほ笑んだ。
「それ、似合ってるね」
「ほ、ほんとう?」
「うん。ね?」
聞かれた子も、うん、とうなずく。
「藤白さん、顔小さいから。絶対ボブも似合うと思ってた」
「なになに?藤白さん、髪切ったんだ。あれ、メイクもしてる?」
「ほんとだ。ほっぺ、じゅわってしてて可愛い」
いつの間にか、わたしの周りには数人のクラスメイトが集まっていた。
今までこんなに人に囲まれたことがなかったわたしは、あ、えと、とどもりながらも、一つ一つの言葉にありがとう、ありがとうと返していた。
「藤白さん、笑ったらえくぼできるんだ」
「え、そうなの?」とわたしが頬に手をやると、くすりと笑われた。
「なんだ、気付かなかったの?もしかして藤白さんって結構、天然?」
夢を見ているんじゃないかと思った。
こんなふうにクラスメイトと話せる日が来るなんて。
今まで話しかけてもそっけなく返されていたのが嘘のように、みんなはわたしに優しくしてくれた。