ブルー・ロマン・アイロニー
「……ねえ、藤白さん。いままでごめんなさい、ずっと」
「え?」
「柏木さんたちが怖くてなかなか言えなかったけど、ほんとうは────」
「おはよう。あまり」
わたしの背後から聞こえてきた静かな声。
それはどことなく嵐の前の静けさを思わせた。
振りかえるとそこにはナナちゃんと瑠衣ちゃんが立っていて。
ふと、わたしはあることに気付いた。
なんでクラスメイトが声をかけてきてくれたのか。
純粋に、わたしがイメチェンしたこともあるだろう。
だけど大きな理由は、ちょっと考えれば明らかだった。
ナナちゃんと瑠衣ちゃんが教室にいなかったからだ。
「あれ?髪切ったんだ。一瞬、誰だかわかんなかった」
ナナちゃんがわたしの髪に触れる。
それを見ていた瑠衣ちゃんの目がつり上がった。
わたしも、クラスメイトの子たちも固まってなにも言えなかった。
ふうん、とナナちゃんが斜め下から顔をのぞき込むようにしてくる。
「私は前のほうがよかったと思うな。メイクも、あまりにはまだ早いよ」
「てかチーク付けすぎだし。家出るときちゃんと鏡見てきたの?」
「こら。瑠衣、言い過ぎ」とナナちゃんは瑠衣ちゃんをたしなめる。
それは子供を叱るようなやんわりとしたものだったけど、一瞬でもわたしを庇ったことが気にくわなかったらしい。