姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
ゼルナの声がどこか遠くに聞こえた。
視界が暗くなっていく……。

『いつも俺の為にありがとう、ウェンディ』
『よく分かったね!今、そんな気分だったんだ』
『俺が何も言わなくても気がつくのはウェンディだけだよ』

フレデリックから言われた言葉が嬉しくて、一生懸命尽くすようになっていった。
最初は喜んでいたけど、次第にそれが当然になって、いいように使われて、飽きられて、結局はどうなってしまったのだろうか……?

ーーー捨てられちゃうの

フラッシュバックする二人が裸で抱き合う光景に震えが止まらなくなる。


「ウェンディーー!!」

「…………え?」

「顔色が悪いよ、大丈夫?」

「ぁ………ごめんな、さい」


ゼルナの声にギュッと手を握り込んで胸元に寄せた。
ほんのりと汗が滲んでいた。

(しっかりしなきゃ……ゼルナ様はフレデリック様とは違う。違う……!そう思いたいのに)

急にこんな態度を取った事で驚いた事だろう。
ゼルナの顔が怖くて見れなかった。

大丈夫だと思っていても、恐怖に動けなくなってしまう。
自分が思っていた以上に傷が深く残っていたようだ。

最近は少しずつゼルナに自分の事を話すようになっていた。
婚約破棄されて此処に来た事は話したが、その内情までは詳しく伝えることが出来なかった。

(折角、感謝されているのに変な顔をしていたらゼルナ様だって困惑するに決まっているわ……)

グッと唇を噛んだ後、笑顔を作ろうと顔を上げた時だった。
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