姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
伸ばされた手……顔を真っ赤にしているがスプーンで唇を突かれて、渋々口を開けると、温かい料理が口の中で溶けていく。
「どうかな……?口に合う?」
「とても、美味しいです……」
「良かった」
パッと雰囲気が明るくなり、嬉しそうなゼルナに断る事が出来ずに次々に運ばれてくるスプーンを受け入れていた。
空っぽになった器を置いたゼルナの手が伸びて、頭を撫でられた事に呆然としていると……。
「ウェンディ…………あのさ」
「……は、はい!」
「偶にはいいんじゃないかな?甘えても」
「あま、える……?」
「ウェンディは頑張り屋で努力家だけど、全然甘えてくれないから少し寂しいよ」
「……!?」
「確かに僕は頼りないかもしれないけど、ウェンディだけが我慢をして辛い思いをするなんて耐えられないよ」
ゼルナはどこか悲しそうに微笑んでいる。
(甘えていい……こんな事、初めて言われた)
いつからか我慢する事が当たり前になっていた。
姉の我儘も父への不満もそうだ。
ずっとニルセーナ伯爵夫人に合わせて耐え続けていた。
フレデリックに対してもそうだ。
一方通行の愛情にいつも不安を感じていた。
だから更に頑張ろうと、伯爵家に相応しい自分になろうと必死だったけど、本当は……。
(辛くない、大丈夫だって思ってた……)
あんな事があったって、唯一気持ちを吐き出せたのは母の前だけだった。
誰かに甘えるなんて、考えた事もなかった。