姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
何曲か踊ってみるものの足がもつれる事もなく、靴が脱げそうになる事もない。
ゼルナは「一体、何が心配なんだい?」と不思議そうにしている。
それに彼もダンスがそこまで得意ではないと聞いて驚いていた。
自分でも何故なのか分からずに、訳を話すとゼルナは一瞬だけ眉を顰めたが、直ぐに笑みを浮かべてこう言った。
「それは、きみの元婚約者が独りよがりな動きをしていただけじゃない?」
「え……?」
「ダンスは二人で息を合わせて踊るでしょう?今、踊ってみて分かるけどウェンディはちゃんと此方に合わせようとしてくれているよ」
「………」
「僕は踊りやすいと思ったけどね」
ゼルナにそう言われて初めて気付く。
確かにフレデリックとは違って、セバスチャンやゼルナは此方を気遣いながら動いてくれていたのだと……。
(……そうだったのね)
長年の悩みがアッサリと解決した事にスッキリするのと同時に、フレデリックとの思い出がどんどんと色褪せていく気がした。
最近ではフレデリックと結婚しなくて良かったと思う程だ。
考え込んでいるとゼルナに「少し休もう」と抱え上げられてしまう。
その後、ポツリと不機嫌そうに呟いた。