姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
大人しくジャネットの後についていくと、ピタリと足を止める。
ホールの端でジャネットと対峙していた。
二メートル程、離れた場所でゼルナと気まずそうなフレデリックは立っていた。


「何でしょうか?」

「随分と調子に乗ってるじゃない!ウェンディ……!」

「……」

「今日はお願いがあってきたの……!フレデリックは返してあげるから、ゼルナ様を頂戴!!今すぐにッ」


その声には焦りや怒りがこもっていた。
お願いというよりは半ば脅しに近い言い方ではあるが、そんな言葉に素直に頷く事は絶対にない。

尚も平然と奪おうとするジャネットに大きな怒りが込み上げてくる。
罵倒したい気持ちを抑えながら、そっと唇を開いた。


「何を言っているのか意味が分かりません。お母様の話ではないのですか?」

「はっ……頭が固くて嫌になっちゃう!そういうところお母様にそっくり……ああ、元お母様だったかしら」

「…………」

「ふふっ、お母様ったらお父様に追い出されたのよ?捨てられたの!!あの年で平民なんて可哀想よね……あんなに尽くしていたのに、愛人に全て取られて、本当惨めだわ!!」


グッと手に力が篭る。
最後まで娘の幸せを想い、懸命に諭していた母の気持ちを考えると胸が痛い。
その言葉にも動じることなく真っ直ぐにジャネットを見つめていた。
ここで挑発に乗ったところで、此方が損をする事は今までの経験で分かっている。
< 196 / 215 >

この作品をシェア

pagetop