姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
(……どうしていいか分からなくて泣きそうになっている時、いつもこうしていた)
フレデリックは嫌な事があると、いつも顔を背けて逃げてしまう。
以前それを指摘した時に「俺はウェンディみたいに強くないんだよ!」と言われてから、見て見ぬふりをしていた。
フレデリックの顔色を窺い、遠慮するようになってから、彼はどんどんと変わっていった。
今思えば、彼を気遣い過ぎた此方の態度も原因なのだろうが、彼はこうして同じ事を繰り返しながら生きていくのだろう。
ゼルナと共に前に進み愛されている今では、あんなに辛く悲しかった気持ちは、ただの思い出に変わっていた。
あんなに自分の中で大きな存在だったフレデリックが今はとても小さく見えた。
安心したように微笑んでいるゼルナが此方に手を伸ばす。
その手を取ろうとした時だった。
「……ま、待ってくれ!」
その声にいち早く反応したのはゼルナの方だった。
鋭い殺気の籠った視線に、フレデリックは大きく肩を揺らした。