姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
互いの事情など、知るわけないのだ。
ウェンディが嫁いで来てから、ずっと彼女の事を避けていたのだから。

自分なりに彼女に近付こうと試みるものの、どう距離を詰めていけばいいのか、何の話題を振ればいいのか……そう考えているだけで一日が過ぎてしまう。
全て、父の言う通りだった。
自分から何もする事なく、彼女を助けることもしなかった。

(こんなに当たり前の事に、どうして気づけなかったんだ……僕はこんな事を続けて一体、何がしたかったんだろう)

自分が傷付きたくなくて、その事で頭が一杯だった。
あまりにも幼稚な態度……恥ずかしくて堪らなくなった。
彼女は深く傷付いていたのに、いつも笑っていた。

(僕には絶対に真似出来ない……)

今までパーティーや夜会で出会い、素顔を知った令嬢達は「どんな貴方でも受け入れる」「貴方を心から愛している」「どんな条件でもいい」そう言っていたとしても、ゼルナの本当の姿と、この生活を見れば態度を一変させて「嫌だ」「有り得ない」「御免なさい」と言って去っていく。

今まで婚約者になる前に、この生活に慣れてもらおうとこの場所に呼んだ事もあった。
しかし、どんな令嬢が来ても数日と経たずに出て行ってしまう。
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