姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
いつものように顔を洗ってから布で拭い、簡素なワンピースに着替えてから後ろ手でリボンを結ぶ。
鏡の前に座って慣れた手つきで髪を梳かして一つに纏めた。
身支度もやっと自分自身で手際良く出来る様になった。

なるべく早く仕事を覚えて、受け入れてくれた人達に迷惑を掛けないようにする為に頑張っているのだが、まだまだ失敗も多い。

こうなって初めて、自分の恵まれていた環境に気づく。
小さな頃から不自由な事なんて一度もなかった。
幸せな暮らしをさせてもらっていたことに気付いては両親に深く感謝するのだ。

(朝から暗い顔をしていたら駄目よ、大丈夫……昨日は夕食を皆で囲めた。一歩、前に進めたじゃない)

昨日は久しぶりに賑やかな食卓で、それにマーサや辺境伯に料理を美味しいと言いながら食べて貰えた。
此方を気遣って話してくれたマルカン辺境伯の温かさとマーサの優しさに感謝するばかりだ。
何より"家族"として受け入れてもらった事が、本当に嬉しかった。

しかし不安に思うのは、ゼルナとの関係だ。

本当は自分の誘いを断ろうとした事も、マルカン辺境伯に言われて仕方なく席についた事も分かっていた。

前髪を梳かしてから鏡で確認しながら手を止めた。
子爵邸に居た時よりはずっと顔色もいいが、どこか寂しそうな表情をした自分が鏡に映っていた。

(酷い顔ね……この先、ゼルナ様と仲良く出来ないままなのかしら)
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