【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
入ってきたのは先程の控え室にいたどちらかの父母らしき人物。確か控え室には小笠原さんのお兄さんとおばあさん、それにこの人達がいたような。
部屋に入ってきた男性が私達に話しかけてきた。
「あの─ちょっとお話をしても構わないでしょうか?」
「お義父さん!あの、コレはですね」
私はコレ呼ばわりか。
あぁ、それにしても花嫁のお父さんだったのか……あれ。ん?なんで娘が違うってさっき言わなかったの?いくらなんでも娘が違ってたらわかるよね。
「いえいえ違うんです。私達は百田さんの本当の家族ではなくて、レンタルされた家族なんです」
私と小笠原さんは目が点になった。
レンタル家族?
何この漫画のネタ満載の状況は。
「あの─お義父さん?レンタル家族とは一体」
「実は私達、百田さんに今日は両親の振りをしてほしいと頼まれた人材レンタル会社の者なんです。ですが、依頼された百田さんとそちらの花嫁さんが違う方だったのでどうしたものかと。本当は打ち明けてはいけなかったのですが」
「…………」
花嫁のドタキャンに本当の家族じゃないレンタル家族。なんて追い討ちをかけるような仕打ち。香菜さんとやらは何を考えているのだろう。他人である私でさえ少し憤りを感じる。
「あ、え─と事情は……理解しました。結婚式はたぶんキャンセルになると思うので、もうお帰りになられて結構です」
淡々と話してるように見えるけど、そう言った小笠原さんは憔悴しきった顔で一気にやつれたように見える。
こんな自信のない小笠原さんを私は見たことがなかった。よほどその香菜さんを信じて愛していたのだろうか。
でももし私が小笠原さんだったらものすごく腹が立つ!
私はものすごい速さで頭をフル回転させてみた。
あ─、マズイ……私のお節介魂が全部出てこようとしている。
「あの─。ちょっといいですか。私が口を出すことではないと思うんですが……」
「あぁ優木さん。まだいたのですか」
はい、まだいました。そして今からこれしか思いつかなかった突拍子もないことを言います。
「私が香菜さんとして花嫁の代役をしてみてはどうでしょうか?」
そう言うと小笠原さんは驚いた顔で私を詰ってきた。
「はぁ?!優木さんあなた何言ってるんですか?なぜあなたが代役を」
「だってあんなに喜んでいるおばあさんを今さら悲しませるような真似、私だったらしたくないです」