【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
晴の親友で辛辣な麻希

神社には大抵鳥居が存在する。
その鳥居は神様の世界と人が住む世界とを区別する印なのだとか。

また神道の神様が(まつ)られ、神主や巫女が儀式の準備などの仕事をおこなっているところ。

言わば神聖な場所なのである。
少なくとも酒を飲んでは泣いて怒って愚痴っていい場所ではない。

「そんなことはぁわらし()だってわ─ってる(分かってる)っての─」

「晴。飲み過ぎ。うるさい」

ここは竹林に囲まれているとても厳かで由緒ある『稲田神社(いなだじんじゃ)』。

私はその神社の長女兼巫女見習いをしている稲田 麻希(いなだ まき)(26)。晴は私の小学校時代からの親友だ。

「少しボリューム落とさないと追い出すわよ」

「だってぇ─。あの鬼担当!さんざん煽っていたくせに、結局おでこにキスしたふりだったのらよ─。キョドってるわらしを面白がってただけの性悪男らのよ─」

「…………」

私はこの酔っぱらいをどうしようかと思案中。

いつものことながら、晴は漫画制作に行き詰まるとここに来て、神社の縁側で私に愚痴る。まぁもう慣れたけど。

……でも今日はいつもと違う様子の話だったから実は私も興味津々なのだ。

「なんでそんなことになったわけ。今日はただの模擬挙式のバイトだって言ってなかった?」

「……そうらったんらけど、な─んか話がどんどんと変な方向にいっちゃれね」
どうせ晴のお節介がまた出たのだろう。昔からそうだった。

小学生の時、おしゃれで有名な友達が着てきた洋服、晴はその子にシャツが出てるよと皆の前で言ってしまった。
それが流行りのスタイルだとは知らずに。

そうそう中学生の時は、好きな男の子がいる友達の仲を取り持とうと、その男の子に話しかけてたら友達に誤解されていたっけ。

高校の時なんか功太くんの彼女に功太くんの良さをいっぱいアピールしてたら、功太くんがシスコンと間違われて別れちゃったっけ。あの時の功太くんマジで怒ってたな─

──……っていうか、思い出すと晴ってお節介のオンパレードじゃない?まぁ、本当に人の役に立ちたいだけなんだろうけど。
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