若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
せめておもしろいものはないかと、美夕は父親の目を盗んで大広間を出ると、大きな両階段のあるエントランスホールに向かった。

階段を上ったり下ったり、花瓶の花を眺めたり、落ち着きなく時間を潰していた美夕だったが。

「そんなところで、なにしてるんだ?」

軽快な声が降ってきて、美夕は振り仰いだ。

二階の手すりに肘をついてこちらを覗き込んでいたのは、見たことのない青年。

光沢のあるスーツを纏い、艶やかな髪を横に流し、まるで王子様のように麗しかった。

なんて素敵な人だろうと、美夕は幼心なりに衝撃を覚え、目を奪われる。

「君、名前は?」

「花柳美夕です」

他人から声をかけられたにもかかわらず、警戒心ゼロで素直に答えると、青年は「ああ。花柳先生の娘さんか」と言って階段を下りてきた。

同じ高さに立つと、とても背が高くスラッとしていることがわかる。

美夕が首をぐっと上に伸ばしてつま先立ちしようとすると、青年は自ら膝をついて目線を合わせてくれた。

「お父さんとはぐれたのか?」

「いえ、その、父は、お客様とお話をしていて、私にはよくわからなかったので……」

「ああ、つまらなくて抜け出してきたのか。そうだよなあ。あのパーティーはつまらない」

勝手にそう納得して目もとを緩める。

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