若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「大変恐縮ですが、五億のお品に匹敵するエメラルドの取り扱いは……」

宝石商が申し訳なさそうに額の汗をぬぐう。

「気を遣わせてしまってすまない。そのエメラルドは、曾祖父の代からある家宝のようなものなんだ」

「なるほど。きっと奥様を最高に美しく飾り立ててくださいますね」

すっかりあのエメラルドをつける流れになっている。美夕は背筋にひやりとするものが走った。

五億の家宝だなんて、傷つけたり落としたりしては大変だ。そんなものを身に着けたら、生きた心地がしない。

「……先ほど買ったダイヤのネックレスだけれど、汎用性が高いと思うの。ミントのパンツドレスにも、きっとよく似合うわ」

やんわりとエメラルドをつけたくない旨を伝えると。

「あのエメラルドを披露することによって、話題が美夕の過去から北菱家の資産に逸れるかもしれない。加えて、妻が家宝を身に着ければ、嫁として快く迎え入れられていることもアピールできる。使えるな」

家宝をマスコミ対策に利用するようだ。そういえば、子どもの頃の美夕にルビーをつけてくれたときも、社交に利用していたか。

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