若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
経団連盟の次期会長の話だろうか。木崎会長の任期はあと三年。四年後に慶が代表に就任すれば、名実ともに日本経済の王となるだろう。

(私の夫は、本当にとんでもない人だわ)

今さら身に染みて、美夕は思わずぶるっと震え上がった。



日本の財界を動かす面々に挨拶し、美夕は緊張で精神をすり減らしながらもなんとか役目を終えた。

付け焼刃にしては上手に振る舞うことができた。慶は美夕の耳もとに顔を近づけて「助かった」とこっそりささやく。役に立てたことに、美夕は安堵した。

無事パーティーが幕を閉じ、賓客は帰路につく。

慶は父親とともに北菱生命の幹部のもとへ挨拶に向かい、美夕は少しの間だけひとりきりで待機していた。

そのとき。

「ねえ、花柳さんじゃないの!?」

旧姓で声をかけられ、美夕は驚いて振り向いた。

そこにいたのは、妖艶なボルドーのイブニングドレスに身を包んだ同世代の女性。

艶々の白い肌に、端がつんとつり上がった目、ふっくらとした涙袋に細い顎。顔にうっすらと見覚えがあり、美夕は記憶を辿る。

「……もしかして、勅使河原(てしがわら)さん?」

勅使河原江怜奈(えれな)――小、中、高と同じ学校に通っていた同級生だ。

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