若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
周囲は関わりたくないとでも言うように一歩引いて顛末を見守っている。美夕が北菱家の妻と知る者は、興味津々になって聞き耳を立てていることだろう。

美夕としてはここで慶の名を出すわけにはいかない。なんとかごまかせないかと考えを巡らせた。

「勅使河原さん、久しぶりね。よかったら向こうで少し話さない?」

この場から離れようと誘ってみるが、江怜奈は小馬鹿にしたような目でからからと笑う。

「やめておくわ。あなたとふたりきりでいたら、お父様に叱られそうだもの。それより同伴者は誰? あなたを連れてきた勇気のある人が見てみたいわ」

江怜奈が周囲を見回す。

嘘でもなんでもかまわない、とにかく、慶が戻ってくる前にあしらわなくては。北菱家に迷惑がかかってはいけない。

焦るそのとき、何者かに肩を力強く引かれ、美夕は驚きに顔を跳ね上げた。

「私の妻になにか?」

「慶……!」

美夕はしまったという気持ちでいっぱいになる。ここで江怜奈に騒がれたら、慶の顔に泥を塗ることになる。

しかし、江怜奈は慶を見ると、騒ぐどころか言葉を失い、がたがたと震え出した。

「どうして……? どうしてあなたが花柳さんなんかと一緒にいるの……?」

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