若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
ふたりは知り合いなのだろうか。慶を見上げると、涼やかな目を江怜奈に向けていた。

「どうしてもなにもありません。彼女は私の妻ですから」

「そんなっ……嘘よ!」

信じたくないとでも言うように、江怜奈は取り乱し、首を横に振る。

彼女の反応に眉をひそめていると。

「犯罪者の娘を身内に引き入れたという噂は、本当だったんだな」

江怜奈の背後からやってきた男性が、慶に冷ややかな非難を浴びせた。

「……勅使河原さん」

慶が固い声を発し、さらに強く美夕の肩を抱く。

ネイビーのスーツを纏った五十代くらいの男性、彼こそが勅使河原耀司(ようじ)

与党の幹部に属する高名な議員であり、江怜奈の父親である。

「お父様、まさか、知っていたの?」

江怜奈は愕然とした顔で父親を見上げるが、当の勅使河原議員は寒々とした目を慶に向けたままだ。

「まったく残念でならない。うちの娘との縁談を蹴り、どんな女性と一緒になったのかと思えば、傷物とは」

傷物と言われたことにも胸がひりついたが、別のことに美夕の思考は持っていかれた。

かつて慶と江怜奈は縁談をしていた……?

「訂正してください。妻がなじられるいわれはありません」

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