若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
***



「いやあ、娘の美夕が慶くんのお嫁さんになるって張り切っていてね。毎日習い事を頑張っているんだよ」

大学の研究室に入り込み、ソファでのんびりと昼食をとっていた慶は、花柳の言葉に喉をつまらせた。

慌ててブラックコーヒーのボトルに手を伸ばし、サンドイッチを食道に流し込む。

「まさか、嫁にどうぞなんて言いませんよね? 十歳差ですよ」

「父親としては、娘ががんばったご褒美をあげたいところなんだよ」

「娘さんが大人になるまで、あと十二年ですか? 気の長い話だ」

「十二年とまでいかなくとも、八年も経てば、充分嫁げる年になるけどね」

――ちなみに、まだ女性の結婚年齢が法的に十六歳だった頃の話である。

再びコーヒーを飲もうとしていた慶は、慌ててボトルを口から離した。危うく吹くところだった。

「……十六って。手を出したらもはや犯罪でしょう」

「婚姻さえ結んでいれば、法的にはなんら問題ないよ」

「いや、倫理的にって話です」

「さすがに十六はまずいかあ。十八ならまだ……」

実の父親の台詞とは思えず、慶は嘆息する。『大切な娘を嫁になどやらん!』くらい言ってほしかったのだが。勧めてどうする。

< 163 / 254 >

この作品をシェア

pagetop