若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
(まさか、父に冤罪を着せたのは……)

蒼白になって口もとを押さえる。とてつもない怒りと恐怖が胸の奥から湧き上がってきた。

父が逮捕されたのは、検察の怠慢な捜査でも、弁護士の力が及ばなかったわけでもなく。

(勅使河原議員の謀略なの?)

言葉を失う美夕を嘲笑うかのように、江怜奈は脅し続ける。

『慶さんだけじゃない。あなたが大切にしているもの、全部壊してやる。家族や友人、会社を潰すことだって簡単よ』

美夕は怒りで手が震えた。人の人生を軽んじて、弄んで、どれだけ他人を不幸にすれば気が済むというのだろう。

しかも、美夕の身内だけでなく、友人や文嶺出版にまで。

『今のあなたの顔が見れないのが残念。だから会いたかったのに』

それだけ告げて、電話が切れた。

江怜奈の甲高い声が、耳の奥に残ってキンキンと頭を締め付ける。

(勅使河原議員は、慶を父と同じ目に遭わせようとしているの?)

パーティーの日、確かに議員は慶のことを脅していた。

慶はそのことを理解した上で、美夕を庇ってくれたのだろうか。

(慶に聞かなくちゃ)

もしも慶が身を危険に晒してまで自分と一緒にいるのだとしたら、止めなければならない。

妊娠への恐怖など吹き飛び、美夕は帰路を急いだ。



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