若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
勅使河原議員は、自分の目的のために、美夕が大切にしているものを消していくつもりだ。家族も、友人も、会社も。

自分が幸せを享受するために、周りを不幸にするわけにはいかない。

「私は自分のために、離婚がしたい」

慶の腕を振り払い、美夕は立ち上がる。

リビングを出ようとしたとき、追いかけてきた慶に腕を掴まれた。

「美夕」

「離して。あなたと結婚なんてしなきゃよかった」

自分の言葉に胸を抉られる。苦しい。愛しい。全部、慶を愛してしまったからだ。

離婚するかと問われたあの日、自分の意思を曲げずに離婚していたなら、こんなことにはならなかった。

慶の腕を振り払い、自室に閉じこもり鍵をかける。塞いだ耳の隙間から、愛しい人の声が漏れ聞こえてくる。

扉の向こうで、慶が呼びかけていた。

「美夕。お前が俺と離婚したいというのなら、いつでも応じるつもりでいた。お前の意思を尊重する」

慶の唇から紡がれた『離婚』というワードに、耳を塞いでいた手を外す。

そうしてくれと言ったのは自分なのに、どうしてこんなにも胸が痛むのだろう。

自分は慶になんと言ってほしかったのだろうか。引き止めてほしかった?

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