若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
仮に引き止められたとしても、美夕はイエスなどと答えられない。

矛盾が美夕の胸を黒く暗く染めていく。

なにも答えられずにいると、ドアをダンと叩く音が聞こえてきた。

「――だが、こんなかたちでの離婚は納得できない。身を引くなんてくだらないことをするな」

愛おしさと悲しみが混ざり合って押し寄せてくる。

応えられないこの身が憎らしくて仕方がない。

妊娠のことも――慶と温かい家庭を築こうなんて、もう考えてはいけない。

そう自覚した途端、お腹の中で少しずつ成長していく我が子が愛おしくなってきた。

慶とふたりで、この子の顔を見たかった。名前をつけてあげたかった。

それが美夕の心の底からの願いなのだと、こんな状況になってようやく気づくことができた。

「……なんと言われようと、私はあなたと離婚します」

ほろほろと涙がこぼれ落ちてくる。気持ちと言葉が連動しておらず、頭がおかしくなりそうだ。

突き放す言葉の裏側にあるのは、愛している、そばにいて、そんな真逆の感情。

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