若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
当初メディアは、慶の家柄と麗しいルックス、異例の若さから、揶揄を込めて『金融王』と報じていた。

しかし、今や実力が伴い、誰も慶のふたつ名を茶化すものなどいない。名実ともに金融王と呼ばれるようになった。

それが、美夕が慶に連絡を取らなかった理由だ。彼はとにかく忙しいし、簡単に手間を取らせていいような人間ではない。

ちなみに、金融王の妻の存在はトップシークレットとされており、既婚者であることこそ知られているものの、相手について報道されたことはない。慶は関係者に厳しく緘口令を敷いているようだ。

「わざわざ呼び出して申し訳ありません。こちらから出向こうかとも思ったのですが、私が北菱家の敷居を跨ぐのは避けた方がいい気がして」

美夕自ら離婚届を持って北菱家を訪ねてもよかったのだが、無駄に騒がせても悪いと思い、慶をここに呼び立てた。その方が、使用人が聞き耳を立てていない分、話しやすくもある。

美夕がダイニングテーブルに緑茶を運ぶと、慶は「お前が茶でもてなしてくれるようになるとはな」と口の端を跳ね上げた。

六年経っても嫌みな態度は変わらない。

< 54 / 254 >

この作品をシェア

pagetop