若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「就職し、自活できるようになりました。もう生活資金は必要ありません」

美夕はそうドライに言い放つと、テーブルの上に離婚届を広げ、正面のチェアに腰を下ろした。

「これまで養っていただいたことについては感謝しています。ですから、できる限りのお礼はさせていただきます。これはそのひとつだと思ってください」

左手の薬指のリングを外し、離婚届の上に置く。

「私と、離婚してください」

離縁。これこそ、彼が望んでいたことだと、美夕は思っている。

「これがお前の望みか。俺の妻になるには荷が重い、と?」

慶はなにを考えているのか読み取れない表情で、じっと美夕を見つめている。

荷が重いもなにも、妻として向き合う気がなかったのは慶の方だ。こちらが挑発されるいわれはない。

「あなたは最初から、私を妻として見る気がなかった。私もあなたを夫だと実感したことはありません」

冷静に反論すると、慶は美夕を見透かすように目を細くした。

「なら、どうして今まで男を作らなかった?」

「……え?」

かりそめの夫婦とは言え、肩書だけは既婚者。浮気など考えたこともない。

だが、誰にも話したことのない美夕の心中をなぜ慶が知っているのか。

ぽかんとしていると、慶はため息とともに吐き捨てた。

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