若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
あまりの素早さと自然さに、警戒心すら湧き上がらなかった。

唇が重なって初めて、自分はキスされたのだと理解する。

キスとは、見つめ合って、了承し合って、目を瞑ってという三ステップを踏むものだと思っていた。

それらを全部すっ飛ばされるとは考えてもみなかった。いや、そもそも離婚を提案した場で逆にキスを返されるとは、誰が予想できただろうか。

美夕が我に返ったのは、さんざん唇の感触を堪能されたあとだった。慌てて「んんっ」と喉を鳴らしてもがき、慶の体を突き放す。

唇が離れると、今度は慶の力強い眼差しに射貫かれる。

突然女性の唇を奪ったにもかかわらず、悪びれもしない態度。それどころか、美夕を身の内に取り込もうとするかのように、蠱惑的な表情をしている。

吸い寄せられて、受け入れそうになり――慌てて拒む。この男に愛などない。目の前の女をからかっているだけなのだと。

気づけば手を振り上げ、慶の頬に向かってパンという軽快な音を打ち鳴らしていた。

「きゅ、急に、こんなことするなんて! あなたって本当に……」

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