若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
離れた唇から温もりが消えない。生まれて初めて交わしたキスは、とても優しくて甘いと同時に、怒りや悔しさに満ちていて、思わず手の甲で唇を拭った。

――ちなみに、ポタージュスープを口移しされたことはあったが、あれを美夕はキスとカウントしていない。しないようにしている。

「妻にフラストレーションをぶつけるなんて、最低だわ!」

「……じゃあ、誰にぶつけろって言うんだ」

慶は突然頬を叩かれたことに怒るわけでもなく、静かに不満を漏らすと、ため息を交じらせて立ち上がった。

「一週間、時間をやる。夫婦になるか離婚するか選べ」

いつだって一方的な慶の言い草に、美夕の怒りは頂点に達する。

「あなたは勝手だわ!」

玄関に向かう慶のあとを追いかけながら、美夕は六年分の怒りを爆発させた。

ずっと妻を放置し、こんなところに閉じ込めていたくせに。

気持ちをないがしろにするにもほどがある。この六年間、どんな思いで生きてきたか。

「私はこの六年、あなたからの愛情なんて、微塵も感じなかったわ! そりゃあ生活は保障されていたし、感謝もしてる、けれど……私は、そんなんじゃなくて――」

もっと違うものが欲しかったのに。

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