若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
言いかけてハッとする。自分はいったい、なにを欲していたのだろうかと。

慶はゆっくりと肩越しに振り向き、美夕が言えなかった言葉を口にする。

「愛されたかったのか?」

静かに問われ、息が止まる。

どうしてこんなにも怒りを感じているのか。慶に対して、憎しみにも恨みにも似た気持ちを抱いているのか。

大切に匿われ、新たな人生を踏み出すきっかけをもらい、それなりに礼は尽くしてもらったはずだ。

なのに、こんなにも踏みつけられたような気持ちになっているのは――。

その答えをようやく知った気がして、美夕は胸が痛みだす。

「愛してやろうか?」

振り向き、真っ直ぐな視線を向けてくる慶に、美夕は言葉を失う。

素直に愛を乞えば、もらえるのだろうか。

六年分の寂しさを、なかったことになどできない。

だが、慶の誘惑を振り払えるほどの強い憎しみも、美夕は持ち合わせていない。

初めて出会ったときから、美夕の中の男は慶だけだ。

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