童話書店の夢みるソーネチカ
「申し訳ない、というよりその子が理絵ちゃんだから言いにくいんです。気が強いというか言葉が強くて……嫌なこと言われちゃいそう」

 ゆかはいっそう小声になって理絵という少女の名前を口にした。目尻が下がり、諦めの混じった微妙な表情を浮かべている。

 耳を近づけて違えなく聞き取った千花は、「うう……」と唸りながら考えた。

 頭ごなしに決めつけるのはよくないが、強気な人ほど融通が利かない。

 千花自身、小中高と学年を繰り上がるなかで、そういったクラスメイトを忌避したきらいがある。

 自分なら絶対関わらないというのに、「話し合って平和的に解決しようよ」などとゆかの背中を押せるはずがない。

 頼みの綱のお姉さんという優位はもうどこにもなかった。

 話し合うという策を最後に回し、何か逃げ道がないか千花は模索することにした。

「衣装の被りなしっていうのは絶対なの?」

「正確にはクラスで話し合って決定したわけじゃないです。ムードメーカーの男の子が賛成して広まって、実際乗り気じゃない人もいます。でも、発言力ある人が乗り気なのでみんな従うかもしれません」

「……理絵ちゃんが大声で話してたのって周りに自分の仮装を認知してもらうためだよね。ってことは理絵ちゃんは衣装被りたくない派で発言力が強い」
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