童話書店の夢みるソーネチカ
 勢いに任せてクラスに広がったから十分な情報交換がなされていないのだ。

 本当に被らないようにするなら、やりたい仮装をみんなが書いて名簿にするなり方法はある。

 理絵のように申告制で決めているのなら、知らずのうちに同じ仮装の人がいても当然に思えた。

 ただそれを嘆いても仕方がない。衣装被りが問題なのではなく、理絵よりも後出しでシンデレラに変身するのがよくないのだ。

 ゆかが決めたのが先なのに宣言したのは理絵が先、というのがなんとももどかしい。

 素直に打ち明けたとしても、文句のひとつやふたつは口から飛び出してきそうだ。となれば……。

 はじめに頭の中に浮かび、慌てて隅に追いやった選択肢がじりじりと迫ってくる。解決とは名ばかりの消極的な和平政策だ。

「わたし、今からでも衣装変えたほうがいいですかね」

「それは……」

 ゆかが口にしたことで押し込めていた雑念が輪郭を帯びる。

 ゆかが衣装を譲りさえすれば衝突も嫌味もなくすべては丸い。けど、それって青春にはビター過ぎる選択じゃないのかな。

 もし自分がゆかだったら、理絵の知らないところで理絵のために我慢することは厭わないけれど、「ほんとは私だって!」ってモヤモヤは思い出を濁しちゃうと思う。

 第一、頼まれたわけでもない偽善は感謝されもしない。だったら、やらずに後悔するくらいなら。
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