童話書店の夢みるソーネチカ

 寒い。

 冷凍されているのかと思うほどの茨の冷たさに千花は悲鳴をあげて飛び起きた。

 ここはどこ?私さっきまで『CLOVER』の閲覧席で絵本を読んでいたはず……なのに。

 思い出せる最後と現状はどうしても結び付かない。見渡す限りの黒。一寸先といわずとも目に映るすべてが暗闇でなんの輪郭も辿れない。

 冴えるほど、不安定な自分を認識して霞ませる。体の震えが、寒さからなのか恐怖からなのか判断がつかなかった。

「や、柳木さん?誰かいませんか……」

 返事はなく、反響もしない声。広大な闇にただ一人。周囲の冷気が容赦なく心を削る。

 ……嫌だ、怖い!

 千花はしゃがみ込んで唯一確かな地面に指を這わす。床面は粗いテラコッタで氷のように冷たい。

 指先のヒリヒリとした痛みはこの場所にさえ拒絶されているのかと思わせる。

 姿勢を低くしたことで千花はいつもの制服を着ていないことに気がついた。切り貼りされたワンピース。裾が至る所から裂けていて穴も開いている。

 千花の服ではない……けれど最近どこかで見たような気がする。

 不幸にもこの粗末な服の無数の隙間から冷気が侵入し、一層肌が凍てつけられる。

 空気に擦れる感覚に千花は顔をしかめた。
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