童話書店の夢みるソーネチカ
 このままじゃ……。何が起こっているのか、夢を見ているくらいに荒唐無稽な状況だけど、近い未来に自分は凍えて死ぬのだろうと本能が予見する。

 南国出身の千花にとって経験したことのない寒さだった。


 留まるくらいなら、進もう。

 疑問を解決しようとする余裕はもうなかった。そもそも千花の頭では答えにたどり着けないと思うけれど。こんな悪夢に論理を求めても仕方ない。

 もしかしたら出口があるかもしれない、その一心でふらつく足を懸命に動かす。

「誰か……返事してよ…………」

 掠れた声が無意識に零れる。いつ足が止まるか分からない。当てのない暗闇を一歩歩むたび、体が重くなっているような気がする。

 組んだ腕を掴む両手は力み過ぎて爪が立っていた。はっきりと並んだ跡が赤を深めている。

 けれど、歯を食いしばって身を縮めることだけが千花のできる唯一の寒さへの抵抗だった。

「助けて…………」



「……デレラ」

 誰か、いるの?
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