童話書店の夢みるソーネチカ
「待って!」

 暗闇に飲み込まれた優しい光に手を伸ばす。

 踏み出した足、その親指に微かなぬくもりを感じた。気がつけば鋭い雨も止んでいる。

 千花は手の甲で瞼をぬぐい、地面にゆっくりと顔を近づけた。足元の色はこれまでよりも明るい。涙の落ちたところがうっすらと濃いしみになっている。

 二つの指でつまんでみるとそれはサラサラとした粉末、灰だとわかった。

 ……灰って温かい。こんなにも心強いんだ。

 物悲しい色の中で千花はうずくまった。胸いっぱいに灰を抱きしめて、小さな笑みを浮かべていた。相変わらず暗くて寒くて孤独なところだけど、わずかに伝わってくる温もりだけで心が満たされた。

 灰をかぶった少女は、極寒の闇夜の下で緩やかにその意識を閉ざした。

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