童話書店の夢みるソーネチカ
「……い大丈夫か!おい!」
切迫した声が近くで響いている。大きな手が両肩を掴む力に千花は痛みまじりで覚醒した。
首をひねると鋭い目を見開いた柳木がこちらを覗いている。後方のライトが眩しく、千花は再び机に顔を伏して呟いた。後ろめたい気持ちで目を見て話せないことも一因だった。
「や、柳木さんだ」
「柳木さんだな。お前、体調が悪いなら事前に言え。すごい汗だ」
「すいません違うんです。私絵本を読んでいる間に寝ちゃって……それで悪夢を見ただけなんです。仕事中なのに、心配もかけてごめんなさい」
不安で苦しかった夢と従業員としてあるまじき失態。黒いものが心を締め付けて千花は涙がこぼれそうになった。
柳木の期待を裏切ってしまったこと、迷惑をかけてしまったことに自分を責めずにはいられなかった。バイトももう、やめさせられるかもしれない。彼の次の言葉を聞くのが怖かった。
柳木は言葉を探すようにいくらか唸ってから口を開いた。
「まあなんだ、勤務中にうたた寝してたことは注意しよう。次からは拳骨で起こす。が、悪夢は精神的に参ってるときや疲れで見るらしいな。お前の様子は尋常じゃなかった。今だって体が震えてんの気づいてるか?今日は今すぐ帰って寝ろ。健康な状態で次は来い」
その言葉で自分がまだ暗闇の世界から戻りきれていないのだと気がついた。