妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
 それなのに、凛風はまた、思いがけないことを口にした。


「結婚したら、さすがにこのまま働き続けることはできませんわ」


 心臓が止まるかと思った。


(凛風が結婚する? 俺以外の男と?)


 そんなこと、到底許せるはずがなかった。
 凛風は俺のものだ。どんなに凛風が嫌がっても、否定しても。他の男に触れさせることなんてできない。心を明け渡させることも。

 気づいたら俺は、凛風に口付けていた。これ以上、我慢なんてできなかった。
 凛風を後宮に連れ帰る。
 好きだと――――愛していると伝え、めちゃくちゃに欲望を刻んで、俺だけのものにする。


「憂炎のバカ!」


 凛風が悲し気に涙を流す。その理由が、俺には分からない。


「憂炎なんて大っ嫌い!」


 けれど俺は、『嫌いだ』って言われている気がしなかった。
 凛風を追いかけようとしたそのとき、あいつは大きく腕を広げる。ヒュッと鋭く風を切る音、次いでドスッて鈍い音がした。


「凛風!」


 無我夢中で、凛風を呼ぶ。胸元に紅い染みが広がっている。顔が青白い。
 恐怖で手足が震えた。
 凛風を失ったら、俺は生きていけない。


「気づいて、いたのか? わたしが『凛風』だって」

「当たり前だろう! 俺がどれだけおまえを見てきたと思ってる!」


 凛風がポロポロ涙を流した。嬉しそうに。とても嬉しそうに。
 理由は分からないまま、俺は凛風の服を剥ぐ。
 毒抜きをしよう、矢を抜こうと思ったその時、俺は思わぬものを目にした。


「どうしても、手放せなかったんだ」


 それは俺が手渡したブレスレットだった。凛風に持っていてほしいと――――少しでも俺の存在を、想いを感じていてほしいと、あいつが居なくなった朝に託したものだ。


「……ねぇ、戻っても良い?」


 凛風が尋ねる。
 俺の答えなんて、はじめから決まっているのに。
 涙が零れた。ようやく、俺の気持ちが届いた。凛風が俺を求めてくれた。そう心から実感できる。


「早く戻って来い、バカ」


 口にしたら、凛風は幸せそうに笑った。
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