キミの恋のはじまりは
小さな箱にかけられたリボンを指でなぞっていると



「ねぇ、莉世さぁ……」



呼びかけられて視線を上げれば、こてんっと首を前に倒した泉の前髪が耳を掠め、肩に重みがかかった。



「俺、莉世以外から…もらわないよ。今までもだし、これからも」

「今までも?」



聞き返すと、熱い吐息を肩口に感じた。それは冷澄な夜風の中でたった一つの灯火のように私に安心を与えてくれる。

泉は私の肩に頭をぐりぐりと押しつけながら、不貞腐れたような声を発した。



「莉世に出会ってから、俺の全部、莉世に持ってかれてんの。……ほかの誰かからの気持ちなんていらない。莉世のずっと俺だけにちょうだい」



視界のすみっこに見える泉の耳が真っ赤になっている。

片手をおずおずとその後頭部に伸ばして頭を撫でると、丸まっている泉の背中がピクリと揺れた。

泉は顔を上げず、肩に埋めたまま、くぐもった声でなにかブツブツと言っているから、耳を傾けると……



「莉世が兄貴のこと好きな時だって、わけわかんない奴とつきあって手繋いだって…俺には莉世しかいないのに……」


……。

………いつも余裕にみえるけど、ほんとは……。



「……なんか、ごめんね?」

「謝んないで。いい。別に。気にしない」



……気にしてるじゃん。


明らかにぶすっと不機嫌を含んだ声に、思わず口元が緩んでしまう。

重いとか、正直、よくわからない。

けど、ずっと私を想っていてくれたことだけはわかる。

『不落の片桐くん』っていつか聞いた女の子たちの囁きは、泉が私だけを心の中にいさせてくれていたからだと思うと、幸せで胸がいっぱいになる。



「拗ねてる?」

「…拗ねてない」



うそ。絶対拗ねてる。

……でも、なんか、それ…かわいい。甘くって、くすぐったい。

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