キミの恋のはじまりは

……怒ってるんじゃなかった?


うかがうように見上げれば、目の前の泉は私の手を離して、赤くなった顔をなぜかごしごし擦っている。

「もう」「あぁぁ」「うわぁ」「やきもち最高」とかぶつぶつとこぼしながら、上を見上げたり、顔を覆ったり、首をぶんぶん振ったりして……なんか忙しそう?



「ねぇ、泉」



首をかしげ、その瞳を覗き込めば、泉がぴたりと動きを止めて目元を赤くしながら私を見た。


……これは、ちょっと照れてる顔。

泉の方が私なんかより、よっぽどかわいい。



「……彼女って言ってくれて嬉しかったよ、ありがとう」

「だって、彼女でしょ」

「うん、だけど、ありがとう」



えへへと笑うと、泉は眉を下げて苦しそうに私を見つめる。



「はぁ、もうだめ。そんな顔しないで。心臓痛くて大変」

「え?なんで?」

「そんなかわいい顔見せるの俺だけにしてよ……、俺に独り占めさせて」



泉の切なげに揺れる瞳のまわりに長い睫毛が陰を落とせば、体の芯が未体験の心地よい痛みで震えた。


まわりを行き交う人たちのざわめきが何かに吸い込まれたようにトーンダウンして、泉の気配ばかりが強くなる。


独り占め?……もうずいぶん前から、してるのに?


子供のようにねだる泉がかわいくて、思わず口元が緩む。

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