キミの恋のはじまりは
僅かに唇がずれた隙間からなんとか呼吸を取り戻そうとするけれど、頭の芯が痺れているみたいで上手にできない。


苦しいのに、その甘さに鼓動が激しく走り回って、私を腑抜けにした吐息が閉じ込めきれず落ちていくから、羞恥で全身が染まってじわりと涙が瞼の裏に溜まった。


泉のシャツを夢中で握り締めると、泉は私を熱っぽく見つめた。



「……そんなかわいくてどーすんだよ、マジで」



滲んだ世界で視線が絡んで、困り果てたような、いつもより口の悪い泉の声が鼓膜を揺らす。



「…ブレーキぶっ壊れそう…」

「ま、……ん、まって…」

「…もっといい?」



また私の返事を待たずに、耳裏に顔を押しつけて息を吸い込む泉。

吐息を感じるだけで、ぴりぴりっと走る感覚に支配されそうになる。


……いいって言ってないのに。

……ア、アイスが溶けちゃうのに。


泉の熱に侵されてる脳を必死に動かして、巡る言葉を震える息にのせる。



「…い、って、な、アイッ…」

「ん?」

「と、けっちゃ…、」

「ん…」



泉は返事こそしたものの、その唇がまた私を食べようと近づいてくる。

ぎゅと抱きしめられ、受け渡される熱誠が胸を突き上げて、もう抱えきれない。

視界がうねってぐにゃりと渦を巻けば


……も、むりぃ…。


涙がぽろりと零れ、私の中で大きく膨らんだ風船が限界を超えて、プシューッと勢いよくその熱を放出させた。

もう息さえつけなくて、ゆでダコ状態で脱力した私は、泉の胸の上にくったりと倒れ込んだ。



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