キミの恋のはじまりは
包み込んでくれる泉のぬくもりでとろりと気持ちが緩んで、呼吸も落ち着いてきた。
泉は背中をさすってくれていた手でそれを確かめると、ゆっくりと私の肩をつかんで胸の中から離すから、お尻がとんっと床についた。
遠ざかったあたたかさが恋しくて、重い瞼を持ち上げる。
「莉世、ごめん。……嫌だったよね……、ほんとにごめん……」
泉の足の間に挟まって座りながら見上げれば、そこには、ゆらゆらと揺れる濃茶の瞳。
それは、もろい色を湛えて、私に注がれていた。
目の前の泉は私の様子をうかがって、あきらかにしょぼくれている。
小さな子犬みたいに、キューンと鼻を鳴らしながら耳を垂れているかのような風態だ。
まだ少し息苦しい胸が、きゅぅと絞られて愛しさが零れる。
……嫌、じゃなかった。
ほんとはその逆で。
好きが溢れすぎて。
もたらされる熱が気持ちよさに変わっていくのが分かってしまって。
泉から与えられるものすべてが大切すぎて。
受け止めきれなくて、臆病になっただけ。