キミの恋のはじまりは
でも。


泉に伝えるのは、少し恥ずかしい。

それに、なんか悔しいし。


黙秘を決めて、泉から視線を外して俯く。

泉の指先が視界に伸びてきて、解けてしまった胸元の制服のリボンを器用に結び直してくれてた。

そうして、丁寧に髪を整えてくれる。



「……俺、莉世のことになると余裕なくなるし、ほんといつもダメになる」



泉の弱気な声に視線を上げると、耳を赤くして気まずそうに眉を垂れている泉と目が合った。

私を見る少し水分の多い二重が、ご機嫌をうかがう小動物のようにきゅるりと光った。


そんなふうに見られたら、甘い苦しさが全身を浸していく。

自分でも驚くぐらい、あっという間に絆される。


……今さっき、飲み込んだばかりの気持ちを口にしたら、泉はどんな顔するだろう。


そう思うのに、素直になるのはまだすんなりとはできなくて。

泉は惜しみなくいつも私にあたえてくれるのに。


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